オーブンの選び方と使い方
お菓子作りでもっともハードルが高そうなのがオーブンの扱い方ではないでしょうか。
ガスオーブンがいいのか、電気オーブンがいいのか、大きさは? 焼きむらはどうしたら避けられるの?
さまざまなご質問をいただきます。
お菓子屋さんでも、オーブンの見張りをするパートは、お店で一番信頼されている人が任されると聞きます。
焼きの名人になれたら最高ですね。
オーブンの種類ですが、分類の仕方として2パターンに分かれます
ガスオーブンか電気オーブンか
一つはガスオーブンと電気オーブンの違いです。
一昔前は電気オーブンの熱の力でガスに劣る、と言われていましたが、最近は電気の力も強まり、ガスと変わらずに使えるものも増えています。
ガスオーブン
ガスの燃焼によって熱風を発生させ、食品を蒸し焼きにするオーブン。
特徴
- 火力が強い
- 立ち上がりが早い=予熱時間が短い
- 熱風が強い
- 水分を素早く飛ばし、パリッとした食感に焼き上げる
- 大きくて重いので、設置スペースが限られらる
ガスオーブンに向いているお菓子
お菓子全般に向きますが、特にパイやタルト、クッキーなど、水分を飛ばしてしっかり加熱したいお菓子に向いています。
ガスオーブンに不向きなお菓子
湯煎焼きをして作るプリンは、ガスオーブンで焼くと、熱風により、表面だけが固まって中は生、ということが起きやすいです。
アルミホイルなどで表面を覆って焼くのがおすすめです。
電気オーブン
電気で食品を蒸し焼きにするのがオーブンです。
特徴
- 電力だけで動くので空気が汚れず、衛生的
- 火力は強まってはいるものの、ガスに近い火力がある機種は限られる
- 予熱に時間がかかる
- 立ち上がりは遅いが、徐々に火力を増してじっくり焼き上げる
- 水分が飛びすぎてぱさつくことなく、しっとりと焼きあがる
- コンパクトで軽いものが多く、いろいろな場所に設置できる
電気オーブンに向いているお菓子
パウンドケーキやスポンジケーキ、シフォンケーキなど、ふんわりしっとりと焼きたいお菓子に向いています。また、ガスオーブンが苦手なプリンもすが立たず、なめらかに焼き上がります。
コンベクションタイプか上下ヒーターか
もう一つ、コンベクションか上下ヒーターかという分け方があります。
コンベクションオーブン
オーブン庫内に熱風を循環させて焼き上げるタイプのオーブンで、対流式オーブンとも呼ばれます。
ガスオーブンはほとんどがコンベクションで、電気も主流はコンベクションになってきています。
熱風が庫内の隅々にまで行き渡るので、食品をむらなく素早く加熱することができます。
ケーキやタルト、クッキー、スポンジなど、なんでもござれ、のコンベクションですが、苦手なのがプリンとシューです。
プリンはガスオーブンの項目でもお話ししましたが、熱風で表面が乾燥し、中まで上手く火が入りません。
また、シュー生地は特にシュークリームは、強い熱風にさらされることで、上部が風で靡いたような形になったり、キノコの傘のような形に焼き上がりやすいです。
ですが、形さえ気にしなければ、サクサクしておいしいシューになります。
上下ヒーターオーブン
コンベクションに対し、上下から熱を当てて食品を蒸し焼きにするのが上下ヒーターです。
昔のオーブンはすべて上下ヒーターでした。
というと旧式のオーブンのように聞こえてしまいますが、上下ヒーター式のオーブンでないとうまくいかないお菓子があります。
上下ヒーターの得意なお菓子台湾カステラ
書籍で台湾カステラを紹介することになり、上下ヒーターを購入しました。
台湾カステラはコンベクションオーブンで焼くとひび割れてしまうのです。
ガスや電気のコンベクションで何度試作してもひび割れていたのに、上下ヒーターのオーブンで焼いたら一発OKで力が抜けました(笑)
オーブンの性格の違いを思い知らされた出来事です。
台湾カステラの他、プリンやスポンジケーキも美味しく焼けますし、シュー生地も上下ヒーターなら形よくきれいに焼けます。
ただ、クッキーだけはコンベクションの方がサクサクで美味しく焼けます。
上下ヒーターオーブンで焼いたクッキーは、どこか水分が抜け切っておらず、食感に物足りなさを感じます。
コンベクションに比べると火力が劣りますので、予熱温度は10〜20℃上げるのがおすすめです。
予熱時間もかかりますので、時間に余裕をもってスタートしてください。
私の使っているオーブン
リンナイビルトインオーブンレンジ(コンベック) RSR-S14E
ビルトインのガスオーブンです。
今の家に引っ越してからずっと使っていますので、もう12年になります。
それ以前はリンナイの据え置きタイプのガスオーブンを使っていました。
そちらに比べると、火力が弱くなったな、という印象です。
ガスに慣れているのでガスを使っている、というのが正直なところで、電気がガスに劣るとはあまり感じません。
このオーブンの一番のメリットは立ち上がりの速さです。
予熱時間が短く、思い立ったらすぐにやける、というところが気に入っています。
スポンジ、パイ、タルト、クッキー、パウンドケーキなど、オールラウンドにこなしてくれます。
シューもシュークリームの形さえ気にしなければ合格ですし、マカロンはガスオーブンの得意分野じゃないかな、と思います。
けれど、プリンはダメです。次に紹介する上下ヒーターオーブンで焼いたプリンを食べたら、ガスオーブンには戻れなくなりました。
日立オーブンレンジ MRO-F6Y
2年ほど前に買ったのが、上下ヒーター式の日立のオーブンです。
その前に、もう一つ別の上下ヒーターオーブンを購入したのですが、そちらは台湾カステラのお役目が終わった後、使わなくなりました。
その後、上下ヒーターのよさに目覚め、機能の充実したレンジも使えるオーブン、ということで購入したのが日立のMRO-F6Yです。
メリットが盛りだくさんすぎて、購入当時に別記事で書かせていただきました。


ざっくりまとめますと、
- 角皿のサイズが30㎝角(正確には30.6×31.1)
- 角皿の中心に出っ張りがない
- スチーム機能なしのオーブン
- 高さが低いわりに奥行きがあって庫内が広々している
- 22リットルなのに30リットル並の使い勝手
- 焼いている間中、庫内が明るい
- 焼成中の音が静か
- 角皿がセラミックなので手入れも楽
- 軽いので持ち運んで使える
東芝石窯ドーム ER-ND500
2015年12月に購入した石窯ドーム。
現在も稼働中です。
商品詳細はこちら。
我が家2代目の石窯ドームで、何度か修理に出しながらも7年使っています。
他の2台と比べると出番はグッと減りましたが、いつでもスタンバイしてくれている安心感があります。
電気オーブンの中でもかなりパワフルで、うちではガスオーブンとほぼ変わりません。
コンベクションオーブンなので加熱むらも少なく、短時間で焼き上がります。
しかも、プリンもこちらはきれいに焼けるので、ガスと上下ヒーターオーブンのいいとこ取りです。
なのに出番が他の2代よりも少ないのはなぜ?
問題は天板なのです。
省スペースで設置ができるよう、奥行きを減らす傾向にあるようで、各メーカーとも現在出回っているオーブンのほとんどは天板が長方形です。
ずっと正方形に慣れてきましたし、ロールケーキが細長くなってしまうのがどうにも我慢ならなくて、性能はいいのに、使う機会が限られてしまいます。
また、天板がテフロン加工なのも汚れが落ちやすいのはいいのですが、型や器をのせたとき、滑ります。
長方形の天板が気にならなければ、ガスに劣らぬパワーと高い性能を兼ね備える石窯は魅力的な機種です。
新しい石窯ならもっと機能が充実していることでしょう。
お菓子やパンを焼く方におすすめです。
オーブンスペック
お菓子を作るのが目的でオーブンを購入されるなら、という前提で書かせていただきますね。
庫内容量
30L以上あるのが理想です。
熱風が庫内全体に回って焼きむらが少なくなりますし、庫内が大きいものほどパワーもアップします。
高さのあるシフォンケーキやスポンジケーキも安心して焼けます。
我が家の日立MRO-F6Yのように22リットルでも庫内が広いものもありますので、お店で見てみるといいですね。
何より、設置場所に見合った大きさのものを選んでください。
最高温度250℃
最近は300℃以上を売りにしているオーブンも多いですが、お菓子で300℃を使うことはほぼないです。
最高で250℃であれば十分じゃないかと思います。
最低温度 30℃
最低温度はピザ生地やサバラン生地など、イーストを使った生地を発酵させられる温度があるといいですね。40℃だとちょっと高いので、できれば30℃があるといいですね。
最低温度の次は100℃になっているといいです。これはメレンゲ菓子を焼くときの温度になります。
120℃だとうっすら色がついてしまいます。
電気かガスか
最近の電気オーブンの進化はめざましく、石窯ドームのようにガスオーブンと変わらないパワーを持つものも出ています。
ガスオーブンは換気のできる場所に設置する、という条件が加わりますので、ビルトインが可能ならガスでもいいと思いますし、設置場所を第一にお考えなら電気をおすすめします。
コンベクションか上下ヒーターか
上下ヒーターの良さも日立MRO-F6Yの項目でたくさん書かせていただきました。
が、最終的にどちらかひとつなら、私はコンベクションを選びます。
プリンは確かに上下ヒーターがおすすめですが、
- パワー、
- 予熱時間の速さ、
- 焼きむらの少なさ、
- 焼き上がりの満足度
といった点で、コンベクションの方が上下ヒーターを上回るかな、というのが個人的な感想です。
スチーム機能は不要
料理やパン作りでは便利に使っている方もいらっしゃるかと思いますが、お菓子作りにオーブンのスチーム機能は要らないと思います。というのも、プリンなどは湯煎することでスチームが出せるからです。
レシピ本などにはオーブンのスチーム機能なしの前提で書かれていますので、そちらに添って作れば問題ないかな、と思いました。
私も過去にオーブンのスチーム機能を使ったことがなく、日立のMRO-F6Yにはスチーム機能がなかったことも購入につながりました。
オーブンの予熱について
先日会った友人から、オーブンを使いたくない理由は「予熱」が面倒だから、と聞いてなるほど、と思いました。
どのタイミングで、どれくらいの温度に、何分セットしたらいいのか?
これがわかるとオーブンがぐんと身近に感じられます。
予熱のタイミング
オーブンの機種や使用年月によって、焼きたい温度になるまでの時間(予熱時間)に開きがあります。
うちのオーブンでも、リンナイのガスオーブンは2分ほどで180℃になりますが、日立のオーブンは6分くらいかかります。

生地が出来上がったタイミングで予熱が完了していなければなりません。
例えば、パウンドケーキを焼くとして、
- 材料を計量する
- パウンド型にオーブンシートを敷き込む
- 材料を混ぜる
- 型に生地を流し入れてオーブンに入れる
このような工程があるとします。

作業工程のどこで予熱を開始するか、がポイントです。
4でスタートしたら間に合いません。
逆に1でスタートしたら、オーブンを待たせてしまいそうです。
そうなると、2か3のタイミング、ということになります。
電気のオーブンなら2の前後、ガスオーブンなら3の前後でよいのかな、と目安をつけるのです。
そして実際にやってみて、ちょっと遅いな、と思ったら前倒し、速すぎた、と思ったら後ろ倒しに調整します。

1〜2回同じお菓子を作るとベストなタイミングが見つかりますよ。
その経験が次に別のお菓子を焼くときにも役立ちます。
予熱温度

みなさんはオーブンで焼く時、いつも予熱温度はどうされていますか?
焼く温度に設定している、という方が多いと思います。
ガスオーブンならそれでもいいのですが、電気オーブン、特に上下ヒーター式のオーブンの場合は実際に焼く温度よりも20℃上げてください。

予熱が完了してオーブンに入れる際に扉を開けますよね?
このとき、外気が庫内に入りこみ、20〜30℃下がってしまうのです。
180℃で焼くつもりが160℃かそれ以下に下がってしまいます。
逆に、200℃に設定しておいたら、扉を開いても180℃までしか下がりません。
ガスオーブンのように温度の回復が早ければ、予熱温度も180℃で構いませんが、

電気オーブンはプラス20℃で予熱することをおすすめします。
レシピの温度と時間は目安と考える
レシピ本に180℃で30分焼く、とあったからその通りに焼いたのに上手くいかなかった。

こんな経験はありませんか?
これまでお話ししてきたように、オーブンにはガスオーブンもあれば電気オーブンもあり、さらにコンベクションなのか上下ヒーターなのか、によってもそれぞれ特性が異なります。
ですので、同じ温度で焼いても上手くいかないこともあり得ます。
失敗しない方法は?

焼きっぱなし、入れっぱなしにしないことです。
例えば、レシピには「180℃に予熱したオーブンで30分焼く」と書かれていたら、

焼き初めから15分したら、扉を開いてケーキの様子を見てみましょう。
シュー生地だけは焼きあがるまで絶対に扉を開けないでくださいね。しぼんでしまいますから。
表面が真っ白でほとんど変化がないようでしたら、温度を10℃上げてみましょう。
そしてまた10分経ったら中の様子を見てみてください。
焼き色がちょうどよければそのまま焼きますし、濃いようなら今度は10℃下げます。

焼き上がったら、竹串で中心部分を刺して確かめます。
生の生地がついてこなければ焼き上がり。生だったらオーブンに戻してさらに5分〜10分焼いてみましょう。

最初の1台は焼き上がりから終わりまで、見守ってあげてくださいね。